放射線化学は 「放射線・雑菌・医療」

α線、β線、γ線あるいは加速粒子などのいわゆる電離性放射線を物質に照射した際におこる化学変化を取り扱う学問分野の総称。

放射線が気体、液体、高分子などを通過すると、その飛跡に沿ってきわめて短時間内にこの部分の分子がイオン化あるいは励起され、これらの活性種の集団が点々と生じる。

ついでスプール内で活性種は互いに反応し、やや長寿命のイオン、励起分子、ラジカルが生じ、系全体に広がっていく。

さらにこれらの活性種は拡散しつつ、互いに、あるいは他の分子と反応し、安定な最終生成物をつくる。

放射線がどれだけの分子に変化を与えたかは通常G値を用いて表すが、通常の物質ではGは1~10程度であり、連鎖的に反応が進む場合は1000以上の高い値も得られている。

このG値が大きいことが実用化の際の一つの目安とされる。

放射線分解の際の主要な中間生成物であるラジカルはきわめて反応性に富み、その反応性を利用して新しい物質の合成などがさまざまに試みられてきたが、多くの場合ほかの反応によって代置できることが明らかになっている。

応用面としては、おもに高分子の分野において研究開発が進められ、放射線によって生じるラジカルやイオンを用いて各種の重合反応、架橋反応による高分子の性質の改善が行われ、包装用シート、電線の被覆材などがつくられている。

また異種の高分子を結合させるグラフト重合の手法を用いて染色性、接着性などの向上が図られてきた。

さらに無機化合物の合成なども試みられているが、触媒などを用いた場合に比して放射線のほうが格段に有利であるという段階にまでは達していない。

放射線を用いての医療品の滅菌、食品貯蔵といった技術も開発されつつあり、これを放射線プロセシングとよぶ。
update:2010年02月20日